自分にも過失があるが、会社に対して損害賠償できる?
A.自分に過失があっても、損害賠償請求が可能です。
労災保険の給付請求について
労働者災害補償保険法第12条の2の2第1項によれば、労災保険においては、労働者が故意に負傷、疾病、障害、死亡またはその直接の原因となった事故を生じさせた時には、労災保険の給付は行わないと規定されています。
また、労働者災害補償保険法第12条の2の2第2項には、労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害もしくは死亡もしくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病もしくは障害の程度を増進させ、もしくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができると規定されています。
つまり、労働災害の発生原因について労働者自身に「過失」が認められたとしても、そのことだけをもって労災保険の給付請求が制限されることにはなりません。
そうだとしても、実際に労災保険の給付を求める場合、どのような事実が過失の対象となりうるのか、給付請求が制限されうるのかについて疑問や不安を抱かれる方が多いと思います。
そんなときは、お気軽に専門家である弁護士にご相談ください。
損害賠償請求について
事故の原因が第三者にある場合や、会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、その第三者や会社に対して、損害賠償請求を行うことができます。
その場合、事業主および第三者は労働者の業務などにおける過失の主張を、行うことが考えられます。労働者側にも「過失」が認められる場合、その程度に応じて損害賠償金が減額されることもあります(これを「過失相殺」と言います)。
それに加えて、事業主側は自らの支払額を減らすために、被災した労働者の落ち度となりうる事実を持ち出してくると思われます。例えば、労働者が恒常的に過度の飲酒や夜更かしをしていたといったことを、過失を基礎づける根拠事実として挙げてくることも考えられます
しかし、労働安全衛生法第66条の5は「その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講」じなければならないと定めていることからすれば、労働者が健康状態を悪化させないなどといった配慮を行う第一次的な義務は使用者側にあるといえます。実際、そのように判断して過失相殺を否定した裁判例も存在します(石川島興業事件・神戸地姫路支判平成7・7・31(労判688号59頁)、大阪高判平成8・11・28(判タ958号197頁))。
労働時間以外の時間をどのように過ごすのか、労働者の気分転換方法などは、その内容が適法で社会通念上想定される行為であるならば、安易に過失相殺の対象とされるべきではありません。
そうはいっても、どのような事実が過失相殺の対象となりうるのか、ご自身だけでは判断が難しいと思います。
そのため、まずは弁護士にご相談いただき、どのような請求が可能か検討していただければと思います。