通勤災害(通勤中の事故)に遭われた方へ
1.労働災害と通勤災害の違い
労働災害とは、業務を行っていたために被った災害によって、怪我をしたり、病気にかかったり、または亡くなったことを指します。
これに対し、通勤災害とは移動が就業に際して行われており、①住居と就業場所との間の往復、②厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動、③①に掲げる往復に先行し、または後続する住居間の移動(厚生労働省令が定める要件をみたすもの)中に、災害に遭って怪我を負う、病気になる、または亡くなることを指します。
例えば、出勤の途中で駅の階段で転んでしまい、怪我をした場合などが考えられます。
このように、通勤と相当因果関係があること、すなわち通勤に通常伴う危険が具体化したことが要件とされています。
そのため、労働者が実際に業務を行っていなくても、通勤による怪我、病気、死亡については、労災保険の対象となる可能性があります。
なお、その場合の給付の種類や金額は、上記労働災害の場合とほぼ同じとされています(通勤災害の場合には、給付の名称には「補償」の文言が付きません)。
2.通勤災害として認められるためのポイント
まず、「通勤」と評価されない移動中に事故に遭ったとしても、労災保険の対象にはなりません。例えば、通勤の途中で「合理的な経路」を逸脱したり、また移動を中断したと認められた場合には、逸脱・中断の間、その後の移動は、原則として「通勤」とは認められないとされています。
ただ、その逸脱や中断が、①日常生活上必要な行為であり、②厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための、③最小限度のものである場合には、逸脱・中断から元の経路に復帰した時点から「通勤」として認められます。
この②については、日用品の購入、病院などへの通院、親族の介護などが当たるとされています。
そのため、事故などに遭った場所が、上記の要件を満たすかどうかをきちんと確認する必要があります。
ただ、通勤中の事故については、多種多様なものがあります。そのため、通勤時に怪我などをしてしまった場合には、一度弁護士に相談し、それが通勤災害に該当するかどうかを、検討する必要があります。
3.会社に対して損害賠償が可能な場合も?
労働災害の場合、会社に安全配慮義務違反や不法行為が認められる場合には、労災保険の給付に加えて、会社側に対して、損害賠償請求を行うことが可能とお話ししました。
通勤災害の場合については、会社側に安全配慮義務違反や不法行為などが認められるケースはなかなか考えづらいと言えます。
もっとも、労働者の通勤方法を会社が指示している場合に、労働者の状況からみてその通勤方法が不適当と認識していなかったにもかかわらず、指示を怠った場合には、会社側に安全配慮義務違反が認められる可能性もあります(例えば、労働者に過剰な残業を課しており、顕著な睡眠不足が認められ、運転を誤る可能性が高いにもかかわらず、自動車やバイクでの通勤を指示していた場合などが考えられます)。
4. 弁護士にお任せください
このように通勤災害については、事故態様などが定型的ではない分、認定される具体的な状況によって、結論が大きく左右されます。
そのため、ご自身が事故に遭った状況や事情などを正確に説明し、実態に即した給付が受けられるようにする必要があります。
まずは、通勤災害に遭ってしまった場合には、弁護士にご相談下さい。